果物の王様ドリアンと私
強烈な匂いから、ホテルや公共交通機関などへの持ち込み禁止で有名な果物の王様、ドリアン。高い木になる東南アジアの果物で、「トゲ」という意味の語幹 Duri/ドリ に接尾辞-an / アン をつけた「トゲだらけのもの」という呼び名(一説)のとおり、とげとげした攻撃的な見た目をしています。今回はそんなドリアンについて、個人的な経験も絡めながら語ります。
目次
ドリアンとの出会い
私とドリアンとの出会いは2018年の冬にフィリピン、セブ島を訪れたときのこと。せっかく東南アジアに来たんだからと果物の王様を探し求めて街を彷徨いますが、季節外れだったようでなかなか見つかりません。ようやくあるスーパーでトゲだらけのボディーを発見!
その場で解体してもらい、食べられる分だけパックに詰めてもらい購入しました。遂に手に入った貴重なドリアンなのに、母は「ガス漏れの臭い」「下水道の臭い」と言いたい放題で、少しだけ口にしてギブアップ。
一方の私は、この果物の王様とすっかり恋に落ちてしまったのです。
ドリアンは外見がトゲトゲしいのに対して、中の果肉はカスタードのようにクリーミー。賛否両論の、形容し難い味と香りをしています。明石書店「インドネシアを知るための50章」では、ドリアンを説明するために熱帯農業研究センターの解説を引用しています。引用箇所によると、
ドリアンの味は
肉質は粘りがあり、生クリームに似てきわめて上質、微かにでんぷん質を感じ、甘み強く酸味なく
ー熱帯農業研究センター『東南アジアの果樹』
ドリアンの香りは
たまねぎ臭い厠臭で、初心者には頭痛を起こしかねない強烈複雑な臭気であるが、その中にも快い花園の香気をかぎ分けることができる
ー熱帯農業研究センター『東南アジアの果樹』
とのこと。
そう、腐った玉ねぎみたいとか、トイレの臭いとか、ひどいことを言われまくっているドリアンですが、その癖こそが濃厚で美味なのです。
加えて、栄養価、カロリーともに高く、体がポカポカに、元気になります。私は誰がどんな悪口を言おうと、ドリアンが大好き。思い返すだけで幸せな気分にしてくれるドリアンのことを想いながら記事を書きます。
道路わきのドリアン屋台
2019年夏、マレーシアのペナンを訪れたときはちょうどドリアンの季節で、路傍のいたる所にドリアンの屋台がありました。ドリアンにも色々な品種があるようで、セブ島のものよりもトゲは鋭く見えます。
お客さんたちはわくわくした様子で念入りに美味しいドリアンを見分けています。目星をつけると売り子さんは厚い皮にナイフで切り込みを入れて、中身が詰まっていて身が熟れていることを確認させてくれます。
たいてい1kgあたり〜リンギという値段設定をしてあって、気に入ったドリアンを量って購入します。その場で食べる人もいて、屋台の傍らにはトゲトゲの皮が山積みになっていました。
ドリアンの剥き方
それではここで、ドリアンマスターのマレーシア人のおじさんにドリアンを剥いていただきます。ドリアンを扱うときは、トゲに注意。うっかり指をさしてしまうと痛いです。まず、下からナイフを刺して切り込みをつくり
次に、切り込みに指を突っ込み、力いっぱい開きます。
最後に、繊維に沿ってぱっかんして身を取ります。
タネを包む果肉が分厚ければ当たり。実は大きく美味しそうに見えても、タネが大きくて果肉が薄ければ残念です。美味しいドリアンかどうかは、開けて齧ってみるまでわからないのです。
ドリアン味いろいろ
ドリアンは果肉を生食する意外にも、いろいろな方法で食されています。
ドリアンスープ
ラマダン明け*のポットラックパーティーでの一品。ドリアンはもはや飲み物。
*イスラム暦における9番目の月、世界中のイスラム教徒のみなさんが断食をしたりする特別な期間。
Dodol / マレーシア風羊羹
餅粉に砂糖やドリアン果実を入れて作ったお菓子。見た目は羊羹ですが、餅粉がはいっているため食感はもちもちしています。一口サイズでお土産に最適。
ドリアンドーナッツ
マレーシア、ケダ州の道端でドリアン味のドーナッツを見つけました。ドリアンの香りはほんのり程度で食べやすい。
ドリアンアイス
タイ チェンマイのナイトマーケットでドリアン味のアイスを見つけました。ドリアン香るミルキーな味。冷たいのに身体が温まる気がする…!
ドリアンチップス
ドリアンチップスは果肉を乾燥させたもので味や香りは控えめ。写真はカナダに留学していたとき、タイ人の留学生が自国から持ってきたものです。
*ブランドは異なりますが、ドリアンチップスはカルディにも売ってあります。
Ketupat Durian / ドリアン味マレーシア風ちまき
ラマダン開けの祝祭の風物詩、Ketupat(クトゥパッ)もドリアン味を見つけました。クトゥパッは米を椰子の葉を編んでつくった袋に入れて炊いたものです。米が水を吸って膨張し、袋の中で圧縮されてちまきのようになります。袋を開いて、カレーなどと一緒に食べます。
このインスタントクトゥパッは米がヤシの葉を編んだ袋の代わりに、細かい穴のたくさん開いた耐熱プラスチック袋に入っています。水で炊くケトゥパッもありますが、この商品はドリアン味のココナッツミルクパウダーを溶いたお湯で炊きます。調理中は家中ドリアンの匂い。幸せ。
ドリアン味の食べ物は、ジャム、ケーキ*、タルト、プリンなど挙げるときりがありません。
*新大久保のインドネシア食材店、Toko Indonesia(Peta Google)で手に入ります。
さらに、食せるのは果肉だけではありません。種も煮たり炊いたりして食べると栗のような味がして美味しいそうです。皮は民間薬として皮膚病に外用したり、灰にして出産後に飲んだりすることもあるらしい。ドリアンってすごい!
ドリアンは高級品!
ところで、新宿区の新大久保エリアにある八百屋さんでもドリアンを見つけました。
このドリアンは輸出用に収穫したようでまだ青めですが、通りに強烈な匂いを放っています。 目を閉じると東南アジアに旅行したかのよう。匂いを嗅ぐといてもたってもいられなくなって、でもまるまる買うには高すぎて。この記事を書くに至りました。