天然のドライフルーツ、デーツの楽しみ方

中学校で使っていた社会の資料集には、たしか「なつめやしの実」という名前で載っていた、デーツ。

マレーシアなどの地域ではKurma / クルマといいます。いつもカレーの Kurmaと混同してしまいます。

中東・北アフリカ原産の実が木になったまま乾燥する天然のドライフルーツで、枝ごと箱詰めされていることもあります。カナダのコストコではNatural Delights/自然の悦びという商品名で売ってありましたが、その名の通り砂糖漬けにしたような強烈な甘みがあって食べると幸せな気持ちになります。

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デーツ 

 デーツとラマダ

2年前に神戸モスクを見学したとき、入り口でデーツをいただきました。イスラム教における預言者ムハンマドﷺ が好きだったという言い伝えから、デーツはイスラム教徒にとって特別な食べ物のようです。

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夕日が映える 神戸モスクの内装
東京モスクのデーツ

とくにデーツが食べられるのは、世界中のイスラム教徒のみなさんが断食をするラマダン月。預言者の習慣にならい、多くの人が断食明けにデーツを口にします。

Ramadan…the only month I have a date every night

ネット上の画像ネタより

この断食明けにまずデーツを食べるという習慣は、科学的にも健康に良いとのこと。空腹ののままいきなり食事をしてしまうと胃が驚いてしまうので、まず少量のデーツを食べて胃を慣らすのです。

また、デーツは食物繊維が豊富で時間をかけて胃から腸へと移動するので血糖値が急上昇せず、空きっ腹に食べても体に負担にならないといいます。

スーパーのデーツ売り場(ペラ州、2019年7月)

さらにデーツはカリウムなどを豊富に含む栄養価が高い食べ物で、断食期間のよい栄養補給にもなります。

デーツは奇数個食べるもの?

私もラマダン期間中にイスラム式の断食を試したことがあります。日没の時間にはすっかり空腹で、牛乳といっしょに食べた1粒のデーツの濃厚な甘さが身体に染み渡りました。

もうひと粒食べたかったけれど、イスラム教徒の友人がこれまた預言者にならって「デーツは奇数個を食べるのがスンナ*だよ」と話していたのを思い出し、ひと粒で留めておきました。こちらも食べ過ぎを防ぐ、健康のための知恵なのかも。

*イスラム教における預言者ムハンマド の言行の伝承に基づく範例・

デーツのいろいろな楽しみ方

デーツはそのまま食べても美味しいですが、ほかにもいろいろな楽しみ方があります。

デーツのバター詰め

写真は神戸のペルシャ料理店で出てきたお菓子の盛り合わせ。中央にあるのが、デーツの種を取り除き、バターやナッツをつめたお菓子です。バターやナッツの塩気が甘いデーツによく合います。

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デーツのお菓子 神戸のペルシャ料理店

Jallab / デーツドリンク

デーツやぶどうのシロップ、ローズウォーター、キャロブ*など不思議なものがたくさん入った黒いジュース。甘々で、黒糖ジュースを飲んでいるみたい。南アフリカ出身の友人は、ラマダン月によく飲んでいたと懐かしがっていました。

*キャロブ:マメ科の植物で日本語名は「いなご豆」。味がチョコレートに似ているらしい。

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アラブ人街で見つけたジャラブ (ベルリン、2020年2月)

お肉と一緒に調理

スペインのモロッコ系レストランでいただいたラム肉のタジン鍋には、レーズンやナッツなどと一緒にデーツが入っていました。私は小学校の給食で出てきたパイナップル入りの酢豚が受け入れられなかった人間なので、デーツ入りのタジン鍋にも違和感がありました(笑)調べてみると、デーツを丸ごと肉料理に入れるのはモロッコ料理によくあることみたい。

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デーツ入り ラム肉のタジン鍋グラナダ、2020年2月)

おたふくソース

デーツを食べたことない!という人も、実は気づかないうちにデーツの「コク深い甘み」を味わっていたのかも。オタフクお好み焼きソースには、原料としてデーツが使われているそうです。オタフクのホームページでは「デーツ部」なるものがデーツについての情報を発信しています。

デーツはコクのひみつ オタフクソース

砂糖の代用品としてのデーツ

世界中の健康的な食生活にこだわる人々のあいだでも、デーツは天然の甘味料として流行っている様子。

カナダに留学していたとき、健康志向のホストマザーがデーツの甘さだけでブラウニーを作りました。砂糖不使用とは信じられないほど甘かったのを思い出して、私も先日、デーツをつぶして生地に混ぜ込んだナッツケーキを作ってみました。深みのある甘さで、しっとりとした仕上がりになりました。

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つぶしたデーツを混ぜ込んだ、砂糖不使用のナッツケーキ

デーツはシロップとしても売ってあり、デザートににかけたり料理の隠し味として使ったりすることもできます。デーツを乾燥させて粉砕したデーツシュガーもあります。

ほかにもべたべたしたデーツプリン、がっつり甘いデーツミルク、刻んでサラダに入れる、ベーコン巻きにするなど、デーツの楽しみ方は無限。

いろいろな種類のデーツ

デーツにはたくさんの品種があり、それぞれ大きさや甘さ、硬さ、食感が違います。いろいろな種類のデーツを選んで買うなら、新大久保の「イスラム横丁」にある輸入食材店か、代々木上原の東京モスクの売店、オンラインショッピングがおすすめです。

🇮🇷ピアロムデーツ

イラン産のピアロムデーツは、クセのない甘さで肉厚、歯ごたえがあります。いちばんのお気に入りです。

イラン産 ピアロムデーツ
🇮🇷マザファティデーツ

イラン産のマザファティデーツはとても柔らか。「干し柿を食べているみたい」と言う友人もいました。

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イラン産 マザファティデーツ

🇹🇳デグレットノウルデーツ

チュニジア産のデーツ、Deglet Nour / デグレットノウル の果肉は激甘で柔らかく、お茶がすすみます。お名前は「輝く光」という意味。

チュニジア産 デグレットノウルデーツ
🇸🇦アジュワデーツ

個人的に気になっているのは、イスラム教における預言者ムハンマドﷺ が好きだったというアジュワデーツ。黒い小ぶりのデーツで、甘さは控えめだと聞きました。ヨーロッパを訪れた際、アラブ系の店でそれらしきものを見つけましたが、ほかのデーツの数倍の価格で手が届きませんでした。いつか試してみたいな。